エッセイ・・・・・・・“ み る ”
 
♪♪こんなこといいナ できたらいいナ♪♪

おなじみドラえもんの何でも出てくる不思議なポケットから

何か一つ出してもらえるとしたら・・・・

子どもたちとそんな話で盛り上がっていたところ、

「こんなのがあったら楽しそう」というモノが頭に浮かびました。

名付けて「だれでもフィルター」(陳腐なネーミングでスミマセン)

メガネをかけて、フィルターを交換すると、

いろんな人や動物の視点が手に入るという道具で、

例えばゴッホのフィルターを装着すれば

ゴッホが何をどの様に見るかがヴァーチャルに体験出来るといった具合です。



数年前私は、十数名の方々と中国を十日間にわたり旅をしました。

その時つくづく感じた事は、同じ場所にあっても、

何を見ているか、どう感じているかは一人一人ことごとく違うという事でした。

古い寺院の中で、ある人は、庭に咲いている花に立ち止まり、

「キレイな花だこと、日本にもあるのかしら」と感想を口にする。

又、ある人は修理中のお堂に近付き

作業中の工人さん達が使っている道具に関心を示す。

一人一人の言葉に耳を傾けていると、その人が何に興味があり、

どんな知識を持っているかがわかって、団体旅行もいいもんだと感じました。

又、先日、奈良法隆寺の百済観音像を、

大勢の修学旅行の生徒さんに交じり拝観させていただいた時の事、

生徒さん達の口から次々と飛び出す感想はとてもストレートで興味深いものでした。

「ヘェー外人じゃん」 「これってボディコンだよネ」 等々。

「口元の表現が飛鳥仏特有の・・・・・」

などと堅苦しい見解を無理にひねり出そうとしていた私は

彼らのパワーにノックアウトされました。



ある本に、宮本武蔵はなぜ強いのか、という文章がありました。

その答えは 

〜相手が武蔵のすきを見ているように、武蔵は自分で自分のすきを見ていたから〜 

というものでした。

つまり自分が相手を見る視点と、相手が自分を見ている視点という

二つの視点を持ち合わせていたから武蔵は強いのだというのです。

言葉では簡単な事ですが、真剣勝負という極限状態にあって、

その二つの視点を持つ事など、リラックスした状態でも自分が見えない私には

想像すら出来ません。

そこでドラえもんに登場していただき「だれでもフィルター」を出してもらいましょう。

まずは、「あなたの奥さんフィルター」

さあ鏡に写った自分の姿を見てみましょう!

「・・・・・・・・・・・・」

それでは気を取りなおして 「あなたのお子さんフィルター」

これはちょっと期待して鏡に写った自分の姿を・・・・

「ムムム」

おっと!これはどうでしょう。

「千手千眼十一面観音菩薩フィルター」

「あっ!それはやめておいた方が・・・」

ドラえもんがあわてて止めに入る事でしょう。



                                      合 掌

    
                                      原田 裕行


        
         中国唐代 十一面観世音菩薩 東京国立博物館



平成9年12月に発行された持地院様寺報「羅漢」に掲載されたものです。


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