エッセイ・・・・・・・“ フルーツ ”
 
「勝ってナンボのものですから」

「勝ち進んで優勝しない事には・・・・・」

「負けたら何も言う資格がありませんから」

プロボクサーや大相撲の力士、プロ将棋の棋士など、勝負の世界に

生きている人たちの言葉に、時として鬼気迫るものを感じることがあります。


勝つ事を目指して何ヶ月も前から調整し、

栄光の瞬間をイメージしながら集中力を高めていく。

敗北への恐怖に怯え、それを払拭する為にまた、

厳しい練習に立ち向かう・・・・・

しかし、それでも試合で負ければ敗者は敗者、

勝ち名乗りを受ける勝者を尻目に歓声の中、静かに立ち去るのみ・・・・・・

「でもいい試合だったよ」 「頑張ったんだからしょうがないよ」

などのなぐさめの言葉も通用しないプロの世界。

であるからこそ人々はお金を払ってまでも

その真剣勝負を目の当たりにしたいと躍起になるのでしょう。


「ヒットを飛ばして有名にならない事には・・・・・」

作家や歌手も然り。


「当選して議員にならない事には・・・・・」

政治家も然り。


「買ってもらって利益を上げない事には・・・・・」

企業経営者も然り。


結果を出さない事には認めてもらえない世界は

全て勝負の世界といえるのかもしれません。



「結果よければ全て良し」

その言葉を旗印に勝利に向かって突き進む・・・・・


「速ければいい」

と、陸上選手は薬を使って肉体を改造する。


「当選すればいい」

と、政治家はお金で票を買う。


「良い点をとればいい」

と、小学生は遊ぶヒマも与えられず、コンビニ弁当を食べながら塾に通う。


「売れればいい」

と、セールスマンは友達のフリをして家族を安心させ、

電話を取り次がせてはモノを売る。



「結果良ければ全て良し」

陸上選手は世界最速の栄冠に輝く。


「結果良ければ全て良し」

政治家はあこがれの金バッジを胸に颯爽と赤ジュータンの上を歩く。


「結果良ければ全て良し」

小学生はやがて一流大学の門をくぐり、一流企業に入社する。


「結果良ければ全て良し」

セールスマンは多くの契約をまとめ多額の歩合を手にする。


しかし、時が経ち、

陸上選手が金メダルを取り上げられた時、

政治家が金バッジのみならず

市民としての権利さえも奪われた時、

一流企業のエリートがはじめて自分の為の人生を生きてみたいと感じた時、

セールスマンが口先で人を騙す事に嫌気を感じた時、


ようやく気が付くのかもしれません。

あの時 ”良し” としていた結果は、今の “ダメ” な結果を導く過程であった事を



プロセス(過程)とリゾルト(結果)

結果を重視するあまり過程をないがしろにしてはいけない。

そんなあたり前の事をつくづく感じるこの頃です。


真っ赤に実ったサクランボが甘くて味わい深いのは

ちゃんとした理由があっての事なのだと・・・・・・。



                                      合 掌

    
                                      原田 裕行


        
              当社謹刻 毘沙門天像



平成9年12月に発行された持地院様寺報「羅漢」に掲載されたものです。


プライド フルーツ
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