エッセイ・・・・・・・“ 想像力・創造力 ”
 
〜 あなたが考える架空の生き物を紙に描いてください 〜

そんなテストがあって、その採点のポイントが独自性だとしたら・・・・

たぶん私は赤点だと思います。



以前、子どもたちと近くの川原に遊びに行った時の事、

岸辺の石をどかすと、そこに「何だこれは!」という生き物を

見つけた事がありました。

「こんな身近に、見た事もないヘンな生き物がいたなんて」

と、家に帰って調べて見ても見つかりません。

そこで図書館で水中生物の専門書を見てみると、どうやらオニヤンマの幼虫、

つまり 『ヤゴ』 だという事がわかりました。

新種の生き物発見か!!

と、ちょっぴり期待していた子どもたちを待っていたのが「ヤゴ」

というあまりドラマティックでない答えだったので、

「お父さんの知っているヤゴはこんなんじゃないゾ」などと

言い訳めいた事を小声でつぶやいたものでした。

私の想像する架空の生き物など 「どっかで見た事あるネ」 くらいなもので、

近所の川に住む生き物にも及ばない。

自然は私の想像より、はるかに創造性に富んでいる。

あらためてそんな事を感じたものでした。



私の友人の菓子職人からこんな質問をされた事があります。

「お菓子の一番のライバルは何?」

ある地域では漬物だったりするのでしょうが、

一般的には、商業的にも味覚の面でも果物が菓子のライバルなのだそうです。

新しい菓子の開発をする際、いろいろな果物を使って試作するらしいのですが、

「これだったら何もしないでそのまま果物として食べた方がうまい!」

という事が多くあるそうです。

「りんごはおいしいけど、アップルパイには又、別の魅力がある。」

そんな風に感じる事の出来る菓子を新たに生み出すのは並大抵な事ではなく、

アップルパイの影には、数え切れない程の淘汰されたりんごの菓子があるとの事。

奇抜な事や、オリジナリティーだけにこだわったものは、物珍しいだけで、

結局すぐに消えていくのだそうです。

作り手が素材(自然)に対する尊敬や愛情を持つ事が第一歩との事でした。



写実的な芸術に接した時、木よりも木らしい木や、本人より本人らしい肖像

という感想を持つ事があります。

そう感じるのは、作者のその木や人物に対する想いが

うまく作品に溶けているからなのでしょう。

今よりもっとおいしいアップルパイを作りたいと思う事と、

アップルパイの様に親しまれる新しい菓子を創造したいと思う事は、

りんごと、その菓子を食べる人たちに対しての愛情が基本にあれば、

何ら変わりのない事なのではないかと思います。

それにしてもお釈迦様は実際にどんなお顔をなさってらっしゃったのでしょうか・・・・・

                                             合 掌
 
                                          原田 裕行
 
         
             如来像 東京国立博物館



平成9年12月に発行された持地院様寺報「羅漢」に掲載されたものです。


みる 想像力  
バックナンバー
阿と吽 “間” 京都、三十三間堂にて ふつう 認める